後継者育成について

 今回は事業承継の中でも重要な課題である後継者育成について考えて見ましょう。

1.事業承継は経営者がなすべき大きな仕事
 後継者がいないことで事業承継が進まないという問題があります。その背景には、子供が事業を承継する割合が減ってきているという現実もあるでしょう。子供が事業を継ぐ割合は4割に減っています。

 子供が事業を継がなくなってきた理由はいろいろあるでしょう。親の事業を子供が継がなくてはいけないと言う社会的な風潮も変わってきました。専門的な業種の場合は、経営者が当初から後継者として子供を想定していない場合も増えています。また、事業としての魅力がないために、子供が継ぎたくないケースもあります。当然、継がすべきでない事業や継がせる状態にしないで子供に事業を承継すると、子供を不幸にしてしまう結果となります。そのような場合は、他の選択肢を考えるべきです。

 ただ、事業を承継するということは、経営者にとって大変重要な課題です。地域にとって価値のある企業、川下・川上に影響力のある企業、技術力の高い製造業等、社会的価値のある企業がなくなってしまうのは損失です。子供が継ぐ、従業員が継ぐ、第三者が継ぐ等方法は別にしても、事業を承継することを目的に経営を行う視点を持つことが必要です。次の代に事業を承継するためには、それに値する企業にしなければなりません。子供に継がせる場合も第三者に売却する場合も同じです。事業承継の時期を目標に、価値ある企業を目指して事業を磨き上げるということです。ポイントは事業を引き継ぐ時期を早い段階で決めておくということです。
 事業承継の時期を10年後と決めたら、10年後を目標に事業の磨き上げ、資産の承継に関わる税務対策、後継者の育成を進める事になります。

2.後継者の育成
 後継者の育成で考えなくてはならないのは、最初から経営者の資質や能力を後継者が備えているわけではないということです。後継者は育てるものです。家の息子には経営者の資質がないとか我が社には経営を任せられる従業員がいないとか決め付けるのではなく、資質・能力を育てていくという発想を持たなくてはいけません。
 ただ、後継者を決める際に十分なコミュニケーションを持ち、後継者が何年後に事業を承継することを納得し、覚悟を持つことが必要です。経営者は息子を後継者と決めて自社に入社させているが、息子は本音では事業を承継する覚悟がなく、むやみに時を過ごしているケースも珍しくありません。出発点でボタンの掛け違いをしないことが重要です。

 他社就業や自社の現場に勤務させることで、後継者を育成できると考えるのは間違いです。もちろん他社経験も現場経験も必要ですが、経営を教えることがさらに重要です。人・モノ・金・情報の経営資源を活用して継続的に利益を上げていくことが経営です。後継者が自社の財務をほとんど知らないというケースをよく耳にします。現場経験の後は経営をしっかりと身に付けさせましょう。コンサルタント等の専門家や外部研修を活用することも必要でしょう。

 近年、事業のライフサイクルはさらに短くなっています。既存の事業が衰退期に差し掛かっている企業も多いのが実態です。後継者は将来に向けたビジョンを持ち、新たな事業への取組も視野に入れた経営が求められます。事業承継を契機に第二創業し、成功している企業もあります。過去の事業を承継するだけでなく、足元を固めた後は、新たな事業展開に取り組む先見性が後継者には求められるでしょう。この点は先代が教えられるものでもなく、後継者が自己啓発に努め、自ら切り開いていくことが必要です。酒類業界においては、特に重要な部分といえます。