『消費者の節約志向への対応策』

 世界的な原油高、原材料高の影響により、相次ぐ値上げやガソリン価格の急上昇等が家計を圧迫しているのはご承知の通りです。日経新聞によれば、大手小売業の2008年3〜5月期の連結決算は、総合スーパーや外食が軒並み減益に陥り、高額商品を扱う百貨店も不振が際立っているようです。一方、食品や生活必需品を扱う食品スーパーやコンビニエンスストア(以下、コンビニ)では、四半期としては最高益を達成しています。

■背景にある消費者の節約志向
 この背景には、消費者が不要不急の衣料品の購入や、自動車利用して家族で出掛けるファミリーレストランや客単価が高い居酒屋等の利用を手控えて、節約志向に走っている姿がうかがえます。外食はほどほどに、食品スーパーで比較的安い食材を厳選して内食(家庭内で調理して食べる)し、自動車は極力乗らずに自転車や徒歩で買物ができる近隣の食品スーパーやコンビニを利用していることが、食品スーパーやコンビニの増益要因だと思われます。消費者心理の冷え込みは、高額商品や買回品、外食を直撃し、生活必需的な最寄品業種は底堅かったといえます。

 こうした傾向は酒類業界を見てもうかがえます。今年5月のビール系飲料(ビール、発泡酒、第3のビール)の出荷量(課税ベース)を見ると、低価格を売りとする第3のビールが発泡酒を抜きました(第3のビール984万ケース、発泡酒976万ケース)。また、今春、大手ビールメーカー各社が相次いで一斉値上げに踏み切る中、瓶・樽以外のビール系飲料の価格を据え置いたサントリーが、サッポロビールのシェア(4月のビール系飲料出荷量(課税ベース))を上回りました。勿論、商品力による要因もありますが、消費者が価格に敏感になっていることが背景として考えられます。

■生活密着業態の増益の捉え方
 では、酒類小売業としては、どのように捉えれば良いでしょうか?コンビニや食品スーパーのような生活密着業態が増益している事実を見ていただきたいと思います。自宅から遠方ではなく、自宅の近くで買物をしようとする消費者の買物行動の事実です。
 特にコンビニは、今年5月の既存店売上高が前年同月比103.7%と、一時期の低迷から脱した感があります。また、タスポ(煙草購入時の身分証明書)開始が、店売りの強いコンビニの大きな追い風にもなっています。

■ファミリーマートの取り組み
 注目したいのはファミリーマートです。業界第3位に位置し、消費者の間でも印象の薄かった同社ですが、業界では最も好調なチェーンです。その大きな理由の1つがホスピタリティ(おもてなしの心)にあるのはご存知でしょうか?「ファミリーマートらしさ=家庭的な雰囲気」を徹底的に追求した結果、ホスピタリティ(おもてなしの心)に行き着きました。宿泊客個人に合わせた接客で知られるホテル・リッツカールトンのクレドカードを徹底的に調査し、独自の行動指針「ファミマシップ」をまとめました。

◎ファミマシップ 感じる、気づく、動く 〜こころにホスピタリテイを〜
・ お客様の期待を超えよう
・ 仲間を信じ、ともに成長しよう
・ 豊かな感性を磨こう
・ 挑戦を楽しもう
・ 世の中に向かって正直でいよう
 この指針をもとに店舗が取り組んだ試みを、全加盟店に「らしさ通信」で配布しています。例えば、「病院前なので車いすのお客さま向けにブザーを設置」「子連れ客が多いので、幼児用の買い物かごを設置」「土木作業員等へのお絞りの無料サービスの実施」等です。
 サービス面でお客様に喜んでいただくことを徹底して実践しようとすることが根本的な精神です。

■顧客密着サービスの実践
 このように消費者の節約志向が顕著な中、生活密着業態が堅調であることの背景には、生活防衛に直結することだけではなく、おもてなしの心をもった顧客密着サービスの実践が大変重要であることが分かります。これは、コンビニ独特のものではなく、同じく生活密着業態である酒販店にも当てはまることといえます。皆様の「らしさ」とは何でしょうか?その「らしさ」の徹底こそ、消費者の節約志向に対応する最適解といえるでしょう。