奥能登清酒製造業への提案

杉本 收


 2008年2月18日・19日の2日間、石川県輪島税務署管内の清酒製造業10社を全て見学し、蔵元の意見も聞くことができた。その総括として、経営コンサルタントの立場から、少し辛口の意見を申し述べることにする。

1.ターゲットエリアの見直し
 ほとんどの蔵元が、地元それも非常に狭いエリア(蔵元の近所)をターゲットにしているようである。しかし、只でさえ清酒需要は落ち込んでいる上に、地方の人口減少は続いており、現在の、地元をターゲットにした戦略では、早晩に行き詰る。
 醸界タイムス社「全国酒類製造年鑑」によれば、平成14年度酒造年度の11蔵合計の製成数量は2091klである。平成15年度酒造年度以降のデータは無いが、清酒需要の推移を全国平均レベルとすれば、現時点では1600kl前後まで落ち込んでいると推計される。
 これをカバーするためには、地元以外に販路を拡大しなければならないが、多くの蔵元には、そのような積極的な取り組みが見えないのが残念である。なお、前出の平成14年度酒造年度の各社別の製成数量を見ると、1500kl、199kl、93kl、72klが各1社で、後の7社は50kl以下であり、非常に零細企業が多い。
 零細ゆえにマーケティング発想を行うことの余裕がないことも考えられるが、現状(地元中心主義)のままの販売戦略を続けるならば、10年後に残っている蔵元数は半減しているであろう。
 「どうすれば地元以外に販売できるか」の前に「現状では生き残りができない」という危機意識を持つことが重要であろう。全体的に危機意識が薄いように感じられた。危機意識を持つことにより、様々なアイデアが生れるし、支援者の輪も広がるであろう。せっかく価値ある製品を持っているのであるから、攻めに転じて頂きたいと熱望する。

2.売店は自社商品・地元産品に限定する
 多くの蔵元が売店を持っているが、蔵元らしい、魅力のある売店は極少数である。したがって、地元以外の客が、わざわざ買いに来る店ではない。“宝の持ち腐れ“である。
 例えば、ナショナルブランドのビールを販売している蔵元の売店がある。これは、“少しでも売れるなら何でも売ろう”という発想であり、“宝の活かし方”を考えない商品構成である。小売免許の規制が厳しかった時代には、地元客のニーズに応えるために仕方ない面もあったであろう。しかし、規制緩和が進み小売免許が取りやすくなったことから、極端に言えば、どこでも酒類の販売ができるようになった。したがって、ビール等の販売は、スーパーやCVSに任せれば良い。(当地には利便性の高い当業態が少ないのは事実であるが…)
 自社の売店は、自社商品・地元産品に限定し、自社商品のPRの場(試飲も行なう)と地元以外の客を引きつける商品構成と店作りをすべきであろう。

3.輪島朝市通りの蔵元は観光蔵を強化する
 輪島朝市通りに面する日吉酒造店は、フリー客を獲得する絶好の立地に所在する。しかし、外見上は単なる酒販店の店構えである。たしかに“醸造元”のノレンや看板はあるが、知らない人が見れば、どこかの醸造元の出店であるとしか思えないファサードである。折角の輪島朝市通りに面するという好立地を活かしきれてなく、もったいない話である。
 また、現在は道路側の平台での販売が中心であるが、客を店内に導入する事が望ましい。そうすることにより、客単価が上がるし、顧客の氏名・住所等の情報を獲得でき、その後の通信販売につながる。
 そこで、店舗の陳列商品を半分にしたり、あるいは店舗の拡大を図る等を行い、醸造工程のイラストや醸造風景の写真やイラストの掲示、あるいは酒造りの道具を陳列して、客を店内に誘導する事が望ましい。
 また、有料で蔵内を見学させることも検討しても良いだろう。見学料は金券として客に還元し、酒を購入する一部にすれば客は喜ぶ。