本年6月下旬の3日間、酒類業フォーラムの有志20名は泡盛製造業者10社(内1社は酒造協同組合)を視察した。本編では、今回の視察を通じて「泡盛の酒販市場、特に販売店や飲食店市場での今後の展開」に関連して気づいたポイントについてコメントしたい。
◆ 泡盛の市場拡大に関しての販売店市場と飲食店市場の現状について
現在の泡盛の「本土」における取り扱い状況を考察すると以下の点が挙げられると思う。
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沖縄への観光経験者が増加してきたことによる沖縄食文化、歴史への好感度UP |
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長寿・健康志向の流れの中での沖縄食文化が受け入れられたことで、沖縄の地酒としての「泡盛」が再認識、再評価され始めた。 |
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乙類焼酎の普及に伴う麦、芋、に次ぐ、次世代売れ筋カテゴリーとしての「泡盛」への 期待感の増加 |
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「泡盛そのものの特徴」(原料、製造方法、貯蔵方法、古酒や甕、ボトルデザイン等)に対するドリンカーの好奇心・興味の増大等 |
つまり、ビールやウイスキーの普及過程とは違い、「地域、歴史、文化の魅力が再評価されながら、沖縄古来の食生活の健康性が注目され、その食文化の地酒である「泡盛」が見直され出した。」ということであろう。
上記の1〜4の特徴を裏付けるように、本土の販売店市場では特産品ショップや百貨店、日本酒、ワイン専門店、業務用酒販店を中心に「定番カテゴリー」として定着しつつある。
また、インターネット媒体、一部のDS、CVS、広域量販店では「戦略カテゴリー」つまり、流行り始めた今の時期を睨んで数種代表銘柄を決めて売上拡大を図ろうとの思いも見え隠れする。
また、飲食店市場では従来からの沖縄料理店以外でも居酒屋、家庭料理店、小料理店等での「品揃え充実政策の1カテゴリー」の有力候補として取り扱いが増加しつつある。変わった動きでは大手居酒屋チェーンや大手アルコールメーカーがPB商品を泡盛製造業者にOEM製造を委託し一気にブームに乗っていこうとの動きもある。(新里酒造では、サントリー社と提携し「美ら島」というPB商品を立ち上げた。)
このように、「泡盛」は販売店市場、飲食店市場共に、本格的なブームが沸き起こる「点火直前」との印象を私は持った。その根拠の一つは飲食店の動向である。
ここ数年、ゴーヤチャンプルーや豚肉角煮(ラフティー)等は上述した居酒屋、小料理店は言うに及ばず、大手居酒屋チェーンでも定番メニューとしての地位を確立した。ミミガー(豚耳皮肉)やソーキそば(豚肉あばら骨煮付けそば)、島ラッキョウ等の喫食経験・愛好者も増加してきている。更には、沖縄のフルーツ「シークアーサーやアロエ、パイナップル」等を使ったカクテルやサワーも女性を中心に好感・受容されつつある。
また今回のツアーで度々試飲したのだが、「もろみ酢」(泡盛製造の蒸留工程で残る「もろみ」を圧搾しろ過、加熱殺菌したもの)と言う副産物商材の潜在能力の高さにも強い関心を持った。飲みやすさや疲労回復機能や価格の値ごろ感(1000ml 1000円位)は、高齢化社会が進展し健康美容ブームが定着した本土での急速な市場拡大を予感する。
「酔うために飲む・つまむ」→「食事を楽しみながら飲む」というのが、飲食店市場での大きな潮流である。その意味では「泡盛」は飲酒経験、頻度を上げる「先兵」となるインフラ(関連料理・食材・飲料等の普及)を既に手に入れたとも言える。
その一方、販売店市場は前述したチャネルでのカバレッジ(取り扱い率)こそ増加しているがトライアルユース(試飲→説明→試し買い)を触発する仕掛けはまだ確立していないと思う。
陳列状況を見てもアイテム数、フェース数共に増加しているものの、「購入への一押し」につながる店内販促はあまりみられない。飲食店市場で浸透しつつあるインフラ作りや「ちょっと試してみませんか?」というアクションが販売店市場には今望まれていると考える。
◆ 飲食店市場での「泡盛拡販に向けての課題と対策」
拡販に向けてのかなりの進捗を見せている飲食店市場でもまだ課題はある。一つは「飲ませ方・提供方法」である。泡盛は一般的には30度ものが多く、熟成貯蔵タイプの古酒だと43度以下である。現状のままでは「お酒に強いヘビードリンカー対象の地酒」の域を出ない。放置すれば市場拡大の足かせになりかねない。25度のマイルドタイプの商品もあるが、それだけでは「裾野」は広がらないと思う。
過去に本格焼酎の雲海が「6・4のお湯割り」を強烈にアピールして一気にブレークしたように「琉球ハーフロック」や「クラッシュ&ウオーターで一段と香り立つ 泡盛!」等のように一般的なドリンカーが飲みやすい「飲用スタイルやコミュニケーションメッセージ」を全泡盛製造業者の叡智やパワーを結集して創り込み、市場浸透を図ってもらいたい。
その一方、タンブラーやロックグラスについても「点火の一工夫」が欲しい。工芸品として名高い琉球ガラス素材の酒器(カラカラ)や徳利等を受注促進キャンペーンのノベルティとして飲食店市場へ提案・普及させるのも一方だと思う。ショット売りや少量容量タイプをメインに推奨しながらカウンター席、テーブル席で「さて、ビールの次は何を飲もうかな?」と思案しているボリューム層への試し買い(トライアルユース)も誘発したい。
もう一つ重要になるのが、本土の一般的な飲食店定番メニューとの適性の訴求提案である。刺身や天麩羅、煮物、焼き鳥、オムレツ、枝豆、サラダ等の誰もが宴席ではオーダーするような柱メニューとのマッチングについての研究である。但し、無理やりこじつけては泡盛の地域性や産地性の優位性がなくなるので調査研究には本腰を入れる必要がある。特定のメニューと泡盛の相性の良さを立証した調査分析データを広報資料として用意したい。例えば焼き鳥との相性が良いと証明できたら、地鶏焼き鳥専門店業態への集中アプローチや「地鶏に泡盛!」等の告知キャンペーンを大々的に打ってみるアクションも望まれる。
◆ 販売店市場での「泡盛拡販に向けての課題と対策」
方向性は大きく2つあると考える。
一つは「貯蔵・熟成した古酒(クース)」の魅力、商品としての希少性、ステータスを打ち出しながら「泡盛」全体の品質イメージを高める方向。もう一つは「沖縄食材と絡めた泡盛やもろみ酢の総合提案」の強化の方向である。
甕や樫樽熟成の古酒の魅力は他の焼酎にない泡盛独自の資産である。自社で地場の土を使い、家庭で古酒が楽しめる熟成甕まで製造している(注1)忠孝酒造の例もある。古酒の品質表示の改正もあり、貯蔵年数表示や詰め口年月日表示については厳格な基準が設けられた。結果、供給できる古酒のボリュームに関しては更に限定されるようになった。これは一見製造業者の負担感が高まることだが、見方を変えれば大いなるチャンスとも捉えられる。
酒販店頭で、酒類のコレクター(収集家)に向けの「甕詰め古酒の限定頒布会」の実施やホームユースも配慮したもろみ酢とのアセンブリー(組み合わせ)商品の開発等、仕掛ける切り口は結構ある。又、(注2)瑞泉酒造の「御酒(うさき)」のように話題性のある商品の提案を待ち望む声は、百貨店はもとより、ネットのチャネルでも強い。好奇心やアンテナの高い飲用層にまず古酒の魅力を認知・理解・浸透させることで、一般の消費者に「高価な古酒を試す前に手頃な値段の泡盛を買ってみよう」とする動きを沸き起こせる可能性は大である。
品揃えの豊富な専門酒販店は言うに及ばず一般小売酒販店でも、酒類に関連した食材の品揃えは他店との競争優位性上取り組まなければならない重要なテーマになってきた。
前述したように、沖縄食材に対する関心の高さを活用して泡盛拡販につなげる作戦である。
幸い、比較的小売店が取り扱いやすい缶詰・乾物でも魅力的な商材は増えてきた。(ポークの缶詰やゴーヤスープ等)また、店頭でもろみ酢やノニジュースの定期試飲会を実施し、富裕層のシニアや高齢者を引き込みも試みたい。彼等に対し、沖縄の逸品食材(注3:豆腐よう、島らっきょう等)と泡盛のマッチングの旨さを啓蒙していくことはかなりの波及効果が見込めると思う。泡盛自体の消費拡大のみならず、量販店やCVSとの品揃えの差別化を図りたいとする一般酒販店の切実なニーズにも合致するからだ。
麦、米、芋、そして奄美の黒糖等徐々に「南進」している焼酎街道が、沖縄の持つ気候・食文化・歴史と泡盛製造業者の様々な革新的な取り組みによって、益々にぎわい、繁盛されることを祈りつつこのテーマの考察を終えたいと思う。
金綱 潤
| 注1 |
沖縄県豊見城市の忠孝酒造では、泡盛の貯蔵に最適とされる南蛮荒焼甕の開発に平成元年より取りくんできた。
泡盛を甕で貯蔵することで甕に含まれる金属成分が溶け出して触媒作用を起こし、泡盛の熟成を促進させる。県内泡盛製造業者として初めて泡盛の熟成容器としての酒甕「忠孝南蛮荒焼甕」の開発に成功した。贈答用、鑑賞用として人気を博している。(出所 忠孝酒造会社案内より引用) |
| 注2 |
御酒(うさき)」に使用されている黒こうじ菌は戦前に使用されていたもので、1946年の沖縄地上戦で壊滅したとされてきた菌である。1935年に東京大学分子細胞生物学研究所の故・坂口謹一郎博士によって工場から採取された瑞泉菌の標本が、60年後の今でも東大で保存され生きていることを1998年6月になって確認。翌年5月、瑞泉酒造ではこの瑞泉菌による戦前の味の復刻をめざし、いままでの醸造方法に細かな工夫を加え、原料米1トンのみの試験醸造をスタート、商品化に成功した。新酒ながら、果実のような甘い香りと、まろやかで雑味のないクリアな飲み口。現代の方々にも飲みやすい泡盛に仕上げた。ビジネスジャンプで好評連載中の「SEED」では、「瑞泉
御酒」がモデルとなって漫画化された。
(出所 瑞泉酒造ホームページ「御酒物語」参照) |
| 注3 |
「豆腐よう」・・・豆腐を泡盛と米こうじで発酵させたもの。チーズのような舌ざわりが特徴。酒通の方、上級者にはたまらない逸品。
「島ラッキョウ」・・・本土のラッキョウと品種は同じだが、可食部分が大きくなる前に収穫したもの。形は細長く、どちらかというとネギに近い。香りは非常に強く食べると次の日まで口の中に残る。味は、独自な辛味の中に旨味がある。一度味わうと病みつきになる沖縄野菜。血が固まるのを防ぐアデノシンという物質が多く含まれていて、その影響からか沖縄県は脳卒中や心臓病が全国で最も少ないとのこと。島ラッキョウは普通のラッキョウと違って細長くシャキシャキとした食感が特徴。ラッキョウの浅漬けはカツオ節をふりかけたり、天ぷらには塩で食べるのが絶品。 |
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